演劇:ヘンリー六世(第一部)・百年戦争
作 ウィリアム・シェイクスピア
翻訳 小田島 雄志
演出 鵜山 仁
美術 島 次郎
照明 服部 基
音響 上田 好生
衣装 前田 文子、他多数
出演 浦井健治 王ヘンリー六世
中嶋朋子 マーガレット
渡辺徹 プランタジネット、後にヨーク公
村井国男 サフォーク伯
ソニン 乙女ジャンヌ
木場勝己 トールボット卿、他多数
会場 新国立劇場
公演 2009年10月27日(火)~11月23日(月・祝)、複雑につき詳細は要確認
鑑賞 2009年11月9日 14:05:00~17:05(休憩15分)
公式HP http://www.atre.jp/henry/
王座が光の輪の中に浮かび上がり、間もなく後方に倒れて先王・ヘンリー五世の崩御を暗示する。グレイのフード付き外套を着装した葬列が下手後方から舞台中央に進む。王冠を抱いた従者が白布で覆われた柩の上に王冠を置く。やがてベッドフォードが重々しく語り始める。簡素だが重厚さを秘めて物語は始まる。
舞台は客席に随分と張り出している。奥から手前にかけて傾斜、上手後方はめくれ上がった感じで小山に登っていくような。全体に四角い床材を張り詰めたようで、上手前方に本水の池、下手前方に崩れた扉や残骸が敷き詰められた印象。全体は黒近い色、荒涼とした原野を思わせる。
場面転換はシンプルでスピーディだが、想像力を湧き立たせるに不足は無い。天井に吊り上げられた二つ見張り台を池の上に降ろしたり、舞台中央に降ろしたり。戸板を並べて城壁。幾度となく大きなシート状の布を掲げたり、巻きつけたり。舞台後方壁には空や雲の映像が投影される。上方からの照明・映像は原野を城内を一室に変え、中央に四角形に挿された二本づつの赤薔薇・白薔薇が未来を暗示する。
役者は舞台後方、舞台脇、客席後方など様々な場所から登場する。舞台後方からの登場は顔から見えて、まるで原野の小山の影から馳せ参じる思いがする。なかなか面白い。
勇壮にして剛毅、真の武将トールボットを好演した木場勝己は第一部のMVPか。
清楚にして凛々しく、時におきゃんな乙女ジャンヌを演じたソニンも印象深い。ただ声の聴き取りにくい部分があった。
タイトルロール、王ヘンリー六世を演じた浦井健治は、老獪な貴族とは対照的な世間知らずで屈託のない王を表現した。
ヨーク公を演じる渡辺徹は舞台映えするが目覚しいシーンはまだない。。
サフォーク伯を演じた村井国男、マーガレットを演じた中嶋朋子はまだ顔見世程度。
百年戦争から薔薇戦争に至る歴史劇、その各場面が深みに至る訳ではない。しかし長い年月に渡って繰り返される権謀術数・殺戮の繰り返しは、権力者の本質を深く暴き出しているように思えた。若きシェイクスピアの作品、小田島訳に忠実に展開されている、私の印象では。
「新国立へ行け」、シェイクスピアの楽しさがこの年になって判ってきた。
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