演劇:利賀フェスティバル2009・劇評編「アイアス」
演出 テオドル・テルゾプロス
原作 ソフォクレス
出演 アナスタシオス・ディマス
メルティオス・イリアス
サバス・ストゥルンボス
会場 岩舞台
公演 2009年8月21・23日
鑑賞 2009年8月21日 20:00~
岩舞台は仮設の野外劇場である。開演前から雨が降っていて、上演中も降ったりやんだり。それも一興。野外である限り雨も覚悟しておかなければならない。(写真は翌日、舞台後方から客席を望む、客席後方は合掌造りの新利賀山房)
ギリシャのアティス・シアターによる。ギリシャ語上演(多分)、日本語訳がディスプレイに表示されたが、タイミングはあっていたか。まあ、大筋を理解すれば内容は難解でない。
「トロイア戦争でアキレウスに次ぐ強さを誇ったアイアス、アキレウス戦死後の慰霊の弁論競技会でオデッセウスと舌戦を繰り広げる。判定を託されたイリオスの捕虜はオデッセウスに軍配を上げた。アイアスは逆上し、オデッセウスや味方の諸将を殺そうとした。しかし女神アテナはオデッセウスを救うためにアイアスを狂わせ、羊を諸将と思わせる。神に嫌われ、諸将にも評価されないことを知ったアイアスは彼らのために戦う虚しさから自刃して果てる(配布資料から要約)」
「アイアスが犯した殺戮の場面をとりあげ、どのようにしてアイアスは羊たちを兵士と思いこんで殺したのか、に焦点をあててこの舞台を創った(配布資料中演出ノートから抜粋)」
舞台には小さな踏み台が十字状に並べてある。そのうち三つは天地逆に置いてあり、箱状で内側は赤色。三人は膝まづいてその中に顔を突っ込み、低い笑い声を発して物語は始まる。笑い声はクレッシェンドして哄笑に変わり、やがてディクレッシェンドして泣き笑いに変わる。随分と長い時間続いたように感じた。
一人の役者が踏み台の上をたどりながら刃物を振り回し、殺戮を模した、様式化した動きを繰り返す。やがて役者が変わり類似の動きを繰り返し、そしてもう一人の役者が類似の動きを繰り返す。時には赤いハイヒールを持って。
最初の長い笑いの後、殺戮を様式化した最初の動きを A とすれば、その後は A'、A'' と言える。シンプルな構成である。逆に言えば単純すぎる。テーマを絞りすぎていないか。私はそう思うが、ギリシャ演劇界ではどうなのか。
雨の中、観客も偉いと思った。観ることもだが、遠来の劇団に暖かいカーテンコール(カーテンは無いが)を送っていた。自らの尺度を持つだろうが、それはそれとして遠来の劇団を受け入れていたように思う。役者も無骨な挨拶を繰り返していたが、思いなしか感動しているように見えた。ここには国際化した姿があるように思う。
| 固定リンク | 0
コメント
岩舞台ですか?新しい舞台でしょうか。
昨年は無かったような…。
利賀は、今でも進化を続けているようですね。
タイトルは忘れましたが、数年前、同様の舞台を、
静岡の野外劇場で観たことがあります(おそらく同じ作品です)。
正直いって難解でしたが、
カーテンコールはとても熱い空気に包まれて、
いつまでも拍手が続いたことを記憶しています。
自分も含めた観客のそんな姿を、
誇らしく思ったこと、感動してしまったことを思い出しました。
国際化した姿。
確かに、そう思いますね。
投稿: salala | 2009年8月26日 (水) 15時51分
本部前に通じる道の、本部に向って左側の広場です。新たに名前が付いたようで、以前は野外特設劇場と称していました。昨年までは背景になった土手を階段状に整備して客席としています。舞台を中心にして観客席が正反対の位置になりました。
2008年は『令嬢ジュリー:A・ストリンドベリ作:億土点演出』、2007年は『犬神:寺山修司作:長野和文演出』が上演されています。
静岡でも上演されていたのですか。
投稿: F3 | 2009年8月27日 (木) 01時58分
私が観たのは、やはり同じ「アイアス」で、
2006年の春の芸術祭のクロージング作品でした。
利賀の新しい野外劇場、斜面に客席が整備されて、
観やすい環境になったようですね。
来年(笑)、縁があればいいなぁと思います。
投稿: salala | 2009年8月27日 (木) 06時54分