« 最近の読書から:『漢詩』 | トップページ | 路上観察:東海道五十三次・神奈川宿から保土ヶ谷宿へ(1) »

2009年7月22日 (水)

最近の読書から:『加藤周一 戦後を語る』

『加藤周一 戦後を語る』
加藤周一著、かもがわ出版、3200円(税別)、2009年6月読了

 

 未刊行1篇を含む10篇の講演集。第一次・第二次世界大戦、冷戦に言及しながら、底流に平和の希求がある。的を絞った話し方から、ゆるぎないリベラルな思想の訴えが伝わる。

 『1941年12月8日、最初に感じたことは、これでおしまいだ。次は、もちろん敗戦だろう。そのころの日本の状況は、まず政党がなかった。まともな労働組合がどこにもありません。新聞は積極的に政府が気にいってくれることを書くように誘導された。
 そのニュースを聞いたとき、突然、見なれていた本郷の風景がいつもと変わって見えた。少し時間が経って考えてみると、そんなに突然というわけでなかった。だんだんに来るという感じでありました。 ---- 「ある晴れた日の出来事」から要約引用』

 この日の朝、新聞号外で真珠湾攻撃と太平洋戦争開戦を知る。変化には予兆がある。緩やかな変化は気付きにくいが、後で振り返れば急に変化したということではないのだろう。加藤の原点ははるか以前にあり、それゆえにこう感じたのだろう。極めて稀な考え方であったことは想像に難くない。

 『1945年8月15日、私の最初の反応は生き延びたというか生きている。次に感じたのは生き残った。同じように生きるはずの友人を殺した戦争とそれを計画し命令した権力を許すわけにはいきません。これが二番目の感情。三番目の感情は、1945年の8月終わりから9月にかけての解放感です。 ---- 「ある晴れた日の出来事」から要約引用』

 この戦争で300万人近くの日本人が死んだ。2000万人ともいわれるアジア、太平洋の人びとを日本軍は殺した。だから戦争責任がどうなるかと言えば、そこに出てきたのが「一億総ざんげ」。それを『実にけしからん言いかた』だと加藤は思う。

 『新憲法ができたのは15年戦争を仕掛けて敗けた直後。日本が侵略戦争をもういっぺんやっては困るので、そうさせないために連合国が九条を作ったということはアジアおよび世界の常識。日本国民というより周辺国にとってもっとも関心が強いものだ。それをいっさい無視して、九条の問題でも靖国神社問題でも歴史教科書問題でも、これは国内問題だとか外国は口を出すなといった極端なことを言う人が最近出てきた。そうではなく、日本の憲法ができた環境ははじめから国際問題。その集中的表現が九条だ。 ---- 「九条と日中韓」から要約引用』

 「九条の会」の呼びかけ人の一人。あちらでグローバル化、こちらで国内問題。物事を都合で歪曲してしまう風潮にいたたまれなかったのではないか。九条のグローバル化された意味がここに表出される。

 大きな足跡を残したリベラルな思想家の原点に触れ、今に繋がる行動の背景を概観できる。読みやすい文書ではあるが一度で理解するには内容が膨大である。繰り返し読んで理解を深めよう。
 一度で良いから、直接、話を聴きたかったとの悔いが残った。合掌。

| |

« 最近の読書から:『漢詩』 | トップページ | 路上観察:東海道五十三次・神奈川宿から保土ヶ谷宿へ(1) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 最近の読書から:『加藤周一 戦後を語る』:

» ドラクエ9Ⅸドラゴンクエスト9ⅨR4マジコンパッチ回避コードフリーク攻略 [ドラクエ9Ⅸドラゴンクエスト9ⅨR4マジコンパッチ回避コードフリーク攻略]
全職業 経験値 9999999、戦闘後HP・MP回復、会心の一撃、小さなメダル 999個、所持金999999G、その他山盛り! [続きを読む]

受信: 2009年7月22日 (水) 15時48分

« 最近の読書から:『漢詩』 | トップページ | 路上観察:東海道五十三次・神奈川宿から保土ヶ谷宿へ(1) »