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2009年1月 3日 (土)

読書:最近の読書から(2008年12月)

1.『お遍路さん』
    加賀山耕一著、平凡社新書、740円(税別)

2.『夢で会いましょう』
    村上春樹・糸井重里著、講談社文庫、448円(税別)

3.『四国遍路』 (再読)
    辰濃和男著、岩波新書727、700円(税別)

4.『宮本輝全短編 上』
    宮本輝著、集英社、2500円(税別)

 

1.『お遍路さん』

 四国八十八ヶ所の霊場を巡る遍路の旅。いつかその一人に成りたいと淡い思いを抱く方は少なくないだろう。
 1200Kmほどの行程、歩きなら40日ほどの日程を要することはすぐ判る。しかし、1200Kmを歩き通すという非日常、加えて食べる・寝るをどうするか。多くの人との出会い、ご接待。著者自らの体験から一つの見方を提示する。より良い生を求める旅は、最低限の生を確保することから始まる。そういう心構えの一端が本書から得られる。
 四国遍路を具体化させようと思う方に一読をお勧めする。

2.『夢で会いましょう』

 村上春樹・糸井重里の二人が揃えば役者に不足はない。しかし、私は少しも面白いと感じなかった。前書きにもあるように、カタカナことばを並べ、どちらかが思い浮かんだ話を付けるという形式。落語の三題話ならぬ一題話である。結果、恣意的な内容が多くなるのは仕方ない。しかも付け筋があまり上品でない。1986年発行で52刷まで進んでいる。それが何だ、面白くないものは何といわれようと面白くない。

3.『四国遍路』

 「しきりに誘うものがあった」と書き出す。芭蕉が思い浮かぶ。古来、野ざらしを覚悟しての旅があった。四国遍路もまた。白装束は死に装束と突き詰めて思うこと、今は無いかも知れないが。順打ちの旅程順に心に残る思いや出来事をまとめたのが本書であり、四国遍路の内面性に触れる。
 61番香園寺を過ぎてあいまいな姿の大日如来を目に映す。「如来はあちらの山の稜線に座っていたかと思うと、そぐ傍を一緒に歩き、かと思うと後ろの峰に座っている」。確認したいならば、四国の地に自らの身を置くしかない。
 四国遍路の精神性を確認したい方に、身近な入門書として一読をお勧めする。

4.『宮本輝全短編 上』

 「泥の河(太宰治賞)」「蛍川(芥川賞)」を含む15の短編で構成される。一編づつ間をおいて読んだ。
 多くの作品の底流に“せつなさ”を感じる。時代、地域、なにより生きることに対する。ただし、何とか乗り越えられる、乗り越えなければならない“せつなさ”で、絶望にまで至らない。宮本のやさしさであろう。
 私は宮本と同世代、大阪下町あるいはその周辺に7年余起居したことがあり、時代も地域も共有する部分がある。そのイメージは、作品理解に少なからぬ影響があった。逆に言えば、共有する部分がない方にどう写るか、それが多少の疑問。
 「泥の河」「蛍川」は、短編と言うより中編。それだけに他の作品より訴えかけるものが多い。この二編を読むだけでも宮本にかなり迫れる。

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コメント

お遍路さん読んでくださって有難うございます。

宮本輝短編集について。

>共有する部分がない方にどう写るか、それが多少の疑問。

多分F3さんは背景がよくわかってらっしゃるからそう思われるのでしょう。
時代背景については私も同じようなものなので違和感も全くなく、場所についても書いてあるだけで十分思い描けます。
それは宮本輝の筆の力だと思います。
人が書けていれば他のことは自然についてくるものと思っていますが、これは私だけかもしれませんね。

投稿: straussst | 2009年1月 4日 (日) 10時40分

 お遍路を結願した方、挫折した方、どちらが多いのでしょうか。情緒に流されて歩き始めても、食べる、寝る、日々の生活がなくなるわけではない。そのことを知らしめてくれました。関連書を少しまとめて読もうかと思っています。

 宮本輝、端正な文章に惹かれます。文学は時代や場所を超越する、そうあってほしいと思います。
 作者はどのような意図を持って時代や場所を設定するのでしょうか。少なからず、それらの雰囲気を意識するでしょう。読者はその雰囲気を再構築できるか、だんだんと難しくなっていくと感じます。人物を描くことで文学はそれを超越できるか。
 Straussさんは多くを読んでいるから一般的と言い難いように思えますけど。

投稿: F3 | 2009年1月 4日 (日) 20時23分

私の場合、確かに宮本輝については、エッセイを始め、著書をほとんど読んでいるのでよくわかるのかもしれませんね。
登場人物がちゃんと描かれ、共感できれば自ずとその人物が生活している場が見えてくるものじゃないかと思ったりもして。

投稿: straussst | 2009年1月 5日 (月) 17時58分

 「Straussさんは多くを読んでいるから一般的と言い難い」とまとめてしまうと話は途切れますね。確かに「蛍川」は場所についての認識がありませんけど、惹かれるものがあります。逆に、場所のイメージがあっても、それほど惹かれない作品もあります。それが即、登場人物のちゃんと描かれていることではないと思うのですが、あるいはそのような一面もあるかも知れません。
 「下巻」を読み始めます。少し時間はかかりそうですが、前に進めると思います。

投稿: F3 | 2009年1月 5日 (月) 22時50分

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