読書:最近の読書から(2008年11月)
1.『ハムレット』
シェイクスピア著、野島秀勝訳、岩波文庫赤204-9、760円(税別)
2.『ハムレット』
シェイクスピア著、小田島雄志訳、白水ブック、830円(税別)
3.『アフターダーク』
村上春樹著、講談社文庫、514円(税別)
4.『若者のための政治マニュアル』
山口二郎著、講談社現代新書、720円(税別)
1.『ハムレット(野島秀勝訳)』
2.『ハムレット(小田島雄志訳)』
間をおかずに二冊を読んだ。心底から理解したなど思わないが、それでもこんなに面白いものなのかと思った。年の功かも知れない。この名著に関して付け加えることなどないが、すこしだけ私の思いを。
第三幕第一場の有名なハムレットの台詞「To be, or not to be: that is the question.」。野島訳は「生きるか、死ぬか、それが問題だ」。小田島訳は「このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ」。これだけでなく全体の差異も興味深い。野島訳はページ下段に逐次、訳注あり。
野島訳か、小田島訳か、はたまた他の訳を選ぶか、それが問題にはならない。いずれでも一読すれば、古典が今に存在する理由がわかるような気がしてくるだろう。
3.『アフターダーク』
浅井マリ、大学生、男の子のような格好、深夜、デニーズで熱心に本を読んでいる。流れる音楽はパーシー・フェイス「ゴー・アウェイ・リトル・ガール」。数ページ読むだけで物語りに引きこまれる。なぜだろうか。
短文を連ねた判りやすい文体、要所にパーシー・フェイスなどセピア色の出来事をちりばめ、何よりも現代の若者の世界を的確に切り取る。しかし、多少アウトロー的な登場人物が余計に興味を惹きつける。
日が変わる少し前から朝7時前の半夜の出来事、浅井マリと姉の浅井エリを主人公にした二つの物語が同時に進む。浅井マリはファミレス、ラブホテル、バー、公園などを背景に。浅井エリは自室で眠り続けるが、深夜、異次元にワープする。それらの出来事を客観的に見つめる観念的な存在の私たち。
魅力的な登場人物で楽しめるが、それほど深奥に入り込まない。私は好きだけど。
4.『若者のための政治マニュアル』
「生きずらい社会を変える最強の武器は民主主義。しかし、特に若者にとって、学校で習った政治の知識と市民としての実践の間には、とても大きな落差がある」と著者は考える。そして、「政治学者の端くれとして、若い人々に対して、政治のスキルを提示することを目指して本書を執筆した」と言う。スキルは10のルールに集約される。
「ルール1:生命を粗末にするな」。政治の最大の目標は生命尊重。自己責任と称して国家責任を放棄せざんばかりの政治家、最低限度の生活保障を無視しかねない政治家。生命尊重に逆行する政治家の言動を見破ろうとの主旨である。
「ルール7:権利を使わない人は政治家からも無視される」。その通りだ。自分ひとりの力でどうなるものでも無いと思っていては何事も始まらない。
残るルールは省略するが、ぜひ本書で確認願いたい。若者の未来のために、今2時間ほどの読書に時間を割くことを惜しんではいけない。もし著者に反論があれば、自分のルールをまとめれば良い。ただし、若者だけに言えることではない、自戒しよう。
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