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2008年11月23日 (日)

演劇:SPAC・ハムレット(続)

 会場     静岡芸術劇場
 公演     2008年11月 9,15,16,22,23,24日(時間は各日異なる)
 鑑賞     2008年11月 23日 15:00~16:40 P-14席

 

 初日公演を観ていささか気になる部分もあったので、再度、静岡芸術劇場に足を向けました。多少不正確な記述を訂正しておきます。

 

 『5幕20場(*1)のハムレット、最初の4場を省略して5場あたりから始まりました』。
 1幕5場を全部割愛、ハムレットが前国王の亡霊との出会を回想する場面に変えて始まったと受け止めました。

 『剣に毒が塗ってあることを知ったハムレットは、その剣でクローディアスを刺してしまいます』。
 その上で、毒酒の入った盃を口にあて、無理に飲ませます。テキストどおりでした。

 『しかし、残った毒酒を飲み干したホレーシオが倒れても人形は屹立したまま』。
 「古代ローマ人のごとくありたい」といって毒酒の盃を手にしますが、結局は生きてハムレットの願いである悲惨な状況を語り継ぐ決意をします。ただハムレットが盃を取り上げる場面はなかった。ハムレットは既に倒れていた。テキストと多少異なります。 

 『舞台上方に英語台詞(と思う)が投影されていました。それが最後に日本語に変わりました』。
 その内容は「これほど悲惨な光景を私は見たことがない。・・・・」。・・・は読み取れませんでした。ここで私とは、ハムレットが王位を譲る敵国の若き王・フォーティンブラスと捉えるのが妥当と思います。しかし、テキストにこの言葉はないようです。

 

 これ以降は舞台の幕が降りてからの余韻です。

 <ご観劇のあとで>とする宮城聡の小文から一部を要約して引用します。
 『ジョン・ダワーの「敗北を抱きしめて(Embracing Defeet)」(*1)の「抱きしめて(embrace)」と言う語の用い方が絶妙と賞揚された。ダワーはシェイクスピアを踏まえてこのタイトルを付けたのか。
 ハムレットの終幕、突然にこの国を統治することになったフォーティンブラスは、敗戦直後の日本人と逆の立場で、「with sorrow I embrace my fortune(悲しみに沈みながらも幸運を抱きしめる)」と語る』。私はこの語感が同一であるかはわかりませんが、多分そうなのでしょう。

 『「なぜ日本人はアメリカを諸手をあげて受け入れたのか」と尋ねられたとき、日本は特殊だったのかと思わずにいられなかった。久しぶりに「ハムレット」を読んで、既にここに似た事例が描かれていると驚かされた。中略』。

 そして、『古典は固定したアタマを揺さぶってくれるもの、と常々言っているが、まことにシェイクスピア恐るべし』。

 

 「敗北を抱きしめて」は発売直後にざっと一読しました。敗戦後の日本を、アメリカ人の目を通しながら冷静かつ暖かい眼差しでまとめられていると感じました。宮城聡は、そこにハムレットの悲劇を乗り越えてなお続く人間の営みの同質性を見いだしました。そして私は、この年になって演劇の深みが少し判るようになった気がしました。

 (*1) ジョン・ダワー著:三浦陽一・高杉忠明訳:
       増補版・敗北を抱きしめて(上・下):岩波書店

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コメント

再びの来静、そして観劇、お疲れさまでした。
楽しいひと時をご一緒できて、嬉しく思っています。
ありがとうございました。

昨日は、トラムでの待ち伏せに失敗してしまい、straussさんと二人とても残念に思っていました。
今日来静されるという書き込みに気付いたのが10時過ぎ。その時私は浜松市内にいたのですが、その後の行動は、のんびりやの私としてはとても素早いものだったんですよ。急いで帰宅し、劇場に電話して席をお願いして、12時過ぎには家を出ました。高速道路の流れが悪くて、少しヤキモキしましたが、何とか1時過ぎには劇場に到着できて、二度目の待ち伏せには成功しました。お会いした時、実はまだドキドキしていたんです。奥様とも再会できて、とても嬉しく思いました。
宮城版「ハムレット」、とても見応えありましたよね。コンパクトにまとめながら、原作の全てを見せてしまう演出の巧みさ、演技の素晴らしさに、驚くと同時に感動しました。そればかりでなく、様々なメッセージが盛り込まれていて、観る楽しさと考える面白さを味わったように思います。
来月の「ドン・キホーテ」も長大な原作を、どんな風に見せてくれるのか、今から興味津々です。
ぜひまた静岡へお越しくださいね。

投稿: さらら | 2008年11月24日 (月) 01時22分

 お疲れ様でした。
 だいたい間際にしか行動計画を立てないので、急に出かけることになりました。出かけるとなるとあれもこれもと考えるのですが、登呂遺跡は修復中とのこと、県立美術館にしました。かねてよりロダン館は一度出かけなくてはと思っていたのでこれ幸いに。おかげさまで堪能しました。
 良い気分で劇場についたら、Mさんがいたのでびっくりしました。ハムレットは三回目とのこと、同じ出し物を繰り返し観るのは良いことです。なかなか出来ないですけど。
 どこがと指摘できないですけど、初日よりはなんかゆったりと演じられていたような気がします。私は良い舞台だったと思います。いくつかの曖昧な点も氷解しました。払拭されないのは、横浜ボートシアターのイメージが付きまとっている点です。別に悪くはないのですけど、何か関係あるのかなと。仮面はまさにそれですけど。
 昨日は見慣れない静岡側からの富士山を楽しみました。何かとても静寂な感じがしました。今朝はほぼ真上から見ました。雲が多かったですが、富士山の辺りは切れていました。そう、もう北九州に移動しています。
 また、どこかでお会いしましょう。

投稿: F3 | 2008年11月24日 (月) 22時27分

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