読書:最近の読書から(2008年8月後半)
1.『俳句という愉しみ』
小林恭二、岩波新書379
2.『俳句脳』
茂木健一郎・黛まどか、角川テーマ21 A85、705円(税別)
3.『現代日本の小説』
尾崎真理子、ちくまプリマー新書071、760円(税別)
1.『俳句という愉しみ』
「俳句という遊び」の続編。しかし、当初から企画されていたわけでなく、読者の反応の大きさと参加した俳人たちのもう一度やりたいと思う気持ちが、再度の句会の実現のきっかけ。
句会の場所は御岳渓谷(東京都青梅市)、前回参加と新たに参加の俳人8人(うち女性1)、著者と編集子の黒子2人。
1日目嘱目で1時間半の間に一人10句。計80句から各人10句を選句。最高4点が3句。披露しておこう。
「大寒の日を押してくる青梅線 大木あまり」
「凍蝶になほ大いなる凍降りぬ 藤田湘子 」
「荒星や毛布にくるむサキソフォン 摂津幸彦 」
二日目は題詠、「舌」「猫」「日向ぼこ」「竹」「線」「時計」「雪」「土」「待つ」「寒」。作品はぜひ一読願う。
昭和15~16年に特高警察に新興俳句が弾圧されたことを知る。理由は反戦的ということになっているようだが。17文字の表現力の深さの証明か。不幸すぎる出来事を記憶しておこう。
2.『俳句脳』
3部構成、「俳句脳の可能性・茂木」「ひらめきと美意識・対談」「俳句脳--ひらめきと余白」。2・3・1の順で読んだ。
裏表紙に本書のテーマ「俳句と脳」。ちょとまて、「俳句脳」とは違うだろう。うまく展開すれば面白い話になるとは思うのだが。
1部は説明過剰か。2部は時々話が飛躍する。3部は俳句紹介。
5年後、10年後の脳科学はどうなるか。「俳句と脳」でなく「俳句脳」の話を期待していますよ。
3.『現代日本の小説』
著者は読売新聞東京本社・文化部次長。1982年入社、1992年に文化部記者になった直後から10余年にわたって「文芸時評」を担当。読売新聞は未購読につき著者の仕事は知らない。
日本近代文学は終わった、文学史は完結した。それでも新しい作家は出てくる。新人賞は増え、応募者は右肩上がり。
1987年の「ばなな伝説」、よしもとばななから話は始まる。村上春樹には多くページを割く。金原ひとみ、綿矢りさの芥川受賞、ワープロ化とジェンダーの消滅。キーボード入力と新しい表現など、社会の変化と文学界の変化。文学は疎遠にしていたので一読ではとても理解できないが、文学界の状況を概観できる。
エピローグ、21世紀に入った最初の年、川上弘美「センセイの鞄」、堀江敏幸「いつか王子駅で」など、昭和の名残のある風景の中に描かれた静謐な作品世界が、私たちの心を和ませてくれたのはやはり何かの反動であったに違いない、と言う。そうかも知れない。
これからは文学とも仲良くしようと思った。
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コメント
「現代日本の小説」面白そうですね。
俳句の方、もしかしたら近いうちに始めることになるかもしれません。
とても好きな句を詠まれる方に出会ったのです。私より年下の女性ですが、魅力的な方で、まず人に惹かれ、句に惹かれ。
どうなりますか。
投稿: strauss | 2008年9月10日 (水) 23時00分
「現代日本の小説」、Straussさんなら全体感を良く把握できると思います。私は知らない作家が多くてこれから勉強です。
俳句、期待していますよ。私はどちらかというと連句により興味があります。こういうのも恥ずかしいほどの知識しかないのですが。
投稿: F3 | 2008年9月10日 (水) 23時43分