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2008年8月16日 (土)

読書:最近の読書から(2008年8月前半)

1.『「昭和」を点検する』
    保坂正康+半藤一利、講談社現代新書1950、720円(税別)

2.『大和三山の古代』
    上野誠、講談社現代新書1952、720円(税別)

3.『古道具 中野商店』
    川上弘美、新潮文庫、514円(税別)

4.『蛇を踏む』
    川上弘美、文春文庫、390円(税別)

5.『俳句という遊び』
    小林恭二、岩波新書169

 

1.『「昭和」を点検する』

 五つのキーワード、「世界の大勢」「この際だから」「ウチはウチ」「それがおまえの仕事だろう」「しかたなかった」に沿って点検は進む。例えば終戦の詔勅冒頭の「世界ノ大勢ト帝国ノ現状トニ鑑ミ」のフレーズ。日本外交は外からの強烈な圧迫で急に動き出す。その象徴的表現が「世界の大勢」と言う。
 ネガティブなキーワードから紡ぎだされる話は、戦争を指揮する高級軍人の他責で、受身で、計画性のない行動様式をあぶりだす。その時、為政者の、ジャーナリストの行動は。
 歴史の裏面、それを私は真実と捉えた。再び戦争に向かわないために、いい加減な言動で彼我の多くの命が奪われたことを、まず知ることと思う。合掌。

 

2.『大和三山の古代』

 奈良(大和)盆地にある標高200mに満たない3つの残丘。万葉集・中大兄の三山歌などから随分と高い山の心象がある。
 「香具山は 畝傍ををしと 耳梨と 相争ひき 神代より かくにあるらし 古も 然にあれこそ うつせみも 妻を 争うらしき」。さて香具山は男か女か。畝傍、耳梨は。長年の論争に終止符を打てれば万葉学者として不朽の名を残すそうだ。ちなみに女男女とする学説が隆盛のようだ。
 他に、三山は藤原宮鎮護の役割があったようだがその思想はどこから到来しらか、など。
 三山に的が絞られているけどそこそこの下地がないと難しいかもしれない。私は下地らしきものなどないけど、多少でも判る部分があればそれで良しとした。旅心を誘われる。

 

3.『古道具 中野商店』

 連作短編ではないけれど、「角型2号」「文鎮」「バス」・・・と章題がついて、どこを取り出しても小さな話が完結する。
 全編を通して不器用なヒトミとタケオの恋愛がクレッシェンドしていく。二人は同僚、ヒトミは店番、タケオは不用品引き取り、舞台は中野商店。古道具を扱い、店主は多少いい加減だが商売っ気は多々ある。店主の姉・マサヨは男勝り。
 数々の男と女の機微が展開する。ある時中野商店は店終いしてヒトミとタケヲは離れ離れに。しばらくして意外な場所で再開する。
 舞台も登場人物も現代とはかけ離れて、いや現代そのものかも知れない。魅力的、生活感を感じる。したたかな一面も。店終いした中野商店はナカノとして再生する。 初川上、惹きつけられそう。

 

4.『蛇を踏む』

 「ミドリ公園に行く途中の藪で、蛇を踏んでしまった(蛇を踏む)」「このごろずいぶんよく消える(消える)」「背中が痒いと思ったら、夜が少しばかり食い込んでいるのだった(惜夜記)」。中編三作の書き出しは魅力的だが、少し変だ。蛇を踏むことが、消えることが、夜が肩に食い込むことがあるだろうか。これから展開する異次元世界のストーリーを暗示する。
 「踏まれたのではしかたありません」と声がして蛇は女になる。そして「あなたのお母さんよ」と、部屋で料理を作って待っている。やはり変だ。どのように対峙したら良いか。私には手強い作品だ。「蛇を踏む」は芥川賞受賞作。 仕事途中、「古道具 中野商店」を一気に読んでしまい、小倉駅キオスクで急遽購入。二冊で川上の異なる両面を垣間見た。

 

5.『俳句という遊び』

 老若男、女はいない八人の俳人が春爛漫の甲州に集結、句会を開いたその記録。
 一日目題詠、八人と著者が出した「春」「金」「枝」「種」「甲斐」「闇」「いか」「眼鏡」「まんじゅう」の題を織り込んで作句。二日目嘱目、場所は太宰の「富士には月見草がよく似合う」と記した天下茶屋。各人思い思いに十句。
 選句は、各人が良いと思う正選(+1点)、悪いと思う逆選(-1点)を選ぶ。一日目は一題につき各一句。二日目は全体から各八句。
 選句からその後の吟味が実に楽しい。片隅でニヤニヤしながら楽しむ自分が感じられる。俳人たちの言葉に対する厳しさ、そこから生まれる良質のコミュニケーション。こういう世界は貴重だと思う。まさに座の文学。どんなに楽しいかはぜひ一読を。
 時々読み返す数少ない本の一冊。私は実作するでもなく、良い鑑賞者でもない。それなのに惹きつけられる。私の好きな一句、「虫鳥のくるしき春を無為(なにもせず) 高橋睦郎」。

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コメント

川上さんを読みましたか。
「蛇を踏む」からずっと好きです。
何を読んでもがっかりさせられることが少ない作家さん。
「真鶴」お薦めです。
(文庫化されてからでも)

「俳句という遊び」
俳句はいつかやりたいと思っているもののひとつですが、入り込むと容易に抜け出せそうにないので、眼の前のやるべきことを優先している次第です。
読んでみます。

投稿: strauss | 2008年8月16日 (土) 14時04分

 川上弘美、読みました。少し小説にも手を出そうかと。Straussさんの書評で記憶に残っているから、選ぶときに優先です。
 「俳句という遊び」是非一読を。よく判るわけではないのですが、日本独特の座の文学の一端を感じられるように思います。できれば、同一著者の「俳句という愉しみ」「短歌パラダイス」まで読んで頂ければ。実作に進んだらいかがですか。

投稿: F3 | 2008年8月16日 (土) 22時27分

「大和三山の古代」の著者の上野誠です。意図を汲み取っていただき、ありがとうございます。

投稿: 上野誠 | 2008年8月18日 (月) 00時39分

 著者直々のコメントを頂き光栄に思います。
 山之辺の道から青空に映える三山を初めて見たのは40年程前のこと。以来、心惹かれる思いを抱き続けています。著書一読してさらに思いが増しました。

投稿: F3 | 2008年8月19日 (火) 23時28分

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受信: 2008年9月 9日 (火) 01時30分

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