演劇:2008年利賀フェスティバル・劇評編1(2008年8月23日)
『サド公爵夫人(第2幕)』
作 三島由紀夫
演出 鈴木忠志
出演 高野綾 ルネ(サド公爵夫人)
久保庭尚子 モントルイユ婦人(ルネの母親)
大桑茜 アンヌ(ルネの妹)
内藤千恵子 サン・フォン伯爵夫人 ほか
劇場 利賀芸術村・新利賀山房
時間 16:00~17:30
演劇を観たというより聴いた。この表現は恐らく誤解をうけるであろうが。
交わされる言葉のテンポの良さ、緊張感。はらはらしながら舞台に引き込まれる。テキストに忠実だと思えたが、緊張感をみなぎらせた演出は鈴木忠志のもの。スタイルに新しさはないかも知れないが、かといってこの緊張感を他に求めることも不可能。
俳優に身体表現と言語表現が要求されるならば、比重は言語表現にあった。しかし、身体表現が動的なものとは限らない。緊張した言語表現を可能にするには、静的ではあるが強靭な身体表現が不可欠。
出と入りを除けば俳優に動きは殆どない。動きは少ないけれど、各々が屹然としている。よって緊張感は一層高まる。能役者にイメージが重なる。それがより言葉の重みを強調する。
高野、公爵に従順を装いながら自分の生き方を強固に主張するルネが良く判った。久保庭、あるいは主役かも知れないモントルイユ夫人、舞台の要。
ところで第2幕の意味は何。
『世界の果てからこんにちは』
作・演出 鈴木忠志
出演 高橋等 日本の老人
久保庭尚子 芸者・春子
竹森陽一、他 僧侶
貴島豪、他 車椅子の男
高野綾 花嫁
舘野百代、他 紅白幕の女
前田徹、他 花火師
劇場 利賀芸術村・野外劇場
時間 20:00~21:00
既に2桁に至るほど観た。花火をシンクロさせた祝祭的な演目は利賀の最後を飾るにふさわしい。舞台を終えて鏡割り、演じる側、観る側入り混じっての祝宴も芝居の続きのように思える。ちなみに酒は北陸の銘酒「若鶴」。
これが一年の終わりか始まりか、いずれの思いも入り混じるが、また一年元気にやっていこうという気持ちになる。
概要は去年掲載分を参照願いたい。
高橋の日本の老人は発声が鮮明になって、言葉の面白さが充分に伝わった。こうでなくては。おもしろく思ったのは、口調が初代・日本の老人の蔦森皓祐に似てきたこと。重厚さは徐々に増すであろう。
女優は「サド侯爵夫人(第2幕)」のメンバーが要所に。
久保庭の芸者・春子も二代目のはずだが、既にそういうことを感じさせない。板についた感じ。客の笑いもうまく誘う。少し前にモントルイユ婦人を演じたばかりなのに。役者は凄い、いや凄い役者に近づいているのだろう。
「天皇陛下がお亡くなりになりました」と春子が告げた後、戦闘を思わせる光景が展開する。地上数mの高さを花火が水平に走る。「射ち来たる弾道見えずとも低し 敏雄」。何回観ていても、突然にある光景が鮮明になることがある。私の受容力も少しは向上しているか。
これは反戦芝居だ。世界は平和でなければならない。
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コメント
偶然訪れ拝見させていただきました。
原作は3幕物で、鈴木さん演出は、第2幕をピックアップされているらしいです。
投稿: kiyoto | 2008年9月 1日 (月) 06時29分
kiyotoさん、コメントありがとうございます。
第2幕がポイントなのですかね。上演時間90分ほどでしたから、全3幕を凝縮することもできるように思うのですが。詰めようがなかったということでしょうか。
ホームページをざっと拝見しました。コンサートにも頻繁に出かけておられるようですね。笙・宮田まゆみが目に付きました。以前、利賀山房でパーカッションの高田みどりと一夜のコンサートが開かれました。最近、利賀フェスティバルで音楽公演がないと思っています。
お時間があればまた覗いてください。
投稿: F3 | 2008年9月 2日 (火) 00時05分