映画:横浜黄金町映画祭(その3)
会場 ジャック&ベティ(京浜急行黄金町駅下車徒歩5分)
会期 2008年7月26日(土)~8月1日(金)
午前中用有のため会社を休み、午後はフリーなので「美式天然、監督:坪川拓史、出演:吉田日出子・高木均・小松政夫・常田富士男・他」を見ました。この映画は劇映画・天然色/白黒の作品、第23回トリノ国際映画祭(2005年)メイン長篇コンペティション部門の正式招待出品でグランプリを受賞しています。ただし、国内で劇場公開はされていないそうです。
あらすじは。
「片田舎の映画館で無声映画「美式天然」が上映されようとしていた。その頃、フィルム運びの少年はなぜかフィルムを砂浜に埋めて失踪。時は流れる。
ある街に、部屋で花の絵を描き続ける母と、冷めた感じの娘がいた。あり日一角手紙が届き、やがて祖父が居候を始める。母と娘の生活はなんとなくぎこちないものになる。
祖父は残る人生をいとおしむように過ごす。そのうち、自分の若い頃に届けなかった映画のことが蘇る。やがて、祖父の空想の映画館で上映がはじまる」
無声映画の劇中劇が登場します。これがストーリーの牽引役となります。無声映画と言えば「美しき天然」のメロディ。それはともかく、古い映画館の歴史の象徴でしょう。実は、監督の故郷長万部の映画館が解体されることになり、その映画館の姿をフィルムに留めたい、と思ったことがこの映画の生まれる契機だったようです。
出演者は随分豪華です。意気を感じて、手弁当で参加しているのではないでしょうか。そうとしか思えません。
劇中劇・過去・現在の構造は難しい。せりふも少ないので難しさに輪をかけます。
今となっては確認できないのでが、空想シーンが天然色で撮影されていたのではないかと思います。少し遅れて気づくのですよね、残念ながら。そう思って見れば理解は随分と進むと思います。
そして空想シーンは美しい。大きな桜の満開の下(安吾みたいだな)で映画宣伝の楽師たちが休んでいるシーン。海岸線に長万部劇場の名前の入った緞帳、舞台が仮設されたシーンなど。
ともあれ、一軒の映画館が存在したことを記録に残す目的は立派に果たしています。いや、そこに留まらずに映画が身近に存在した時代を髣髴とさせました。
横浜黄金町映画祭で、三公演・四作品を見ました。商業ベースには乗らない作品ばかりです。しかし、それが作品として充実していないことではありません。むしろその逆です。
私は映画を疎遠にしてきましたが、表現技法の一つとして、映画をもう少し身近に感じて良いと思わされました。良い作品に巡り合えたということです。
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コメント
いい映画に出合えて良かったですね~
これからはこちらで映画評も読めますね。
嬉しいです。
投稿: strauss | 2008年7月31日 (木) 23時35分
出来上がった作品を評価すれば良いのであって、その製作過程を評価要素に加える必要はありません。しかし裏話としての若い人の映画を作る情熱には感動します。例えば、制作費を溜めては一部をつくり、また溜めてはつくり。5年の歳月をかけた「クロスワード・ダイアログ」。
ともすれば当たり障りない過ごし方に向かいがちですが、若い人の情熱を分けて貰ったような思いがしました。Straussさんに及ぶことはありませんが、以降、映画にも足を向けたいと思います。
投稿: F3 | 2008年8月 2日 (土) 08時16分