随想:Stir,No shake
「Vodka Martini. Shaken, not stirred.」、これは「007、ジェームスボンド」の決め台詞です。私はほとんど映画を見ませんので話題として認識するだけです。本日、「007 caino royale」というタイトルのスパムメールが届いていました。内容はともかくグッドタイミング。
正統派のマティーニは「Stir,No shake.」。このようなタイトルの小説があるそうですが、これも話題として認識するだけです。
仕事の関係で週に1・2日は外泊します。たいていはビジネスホテルですが、時々、シティホテルに泊まります。バーがあれば、たまには1・2杯のお酒で寝る前の一時を楽しみます。周りに人がいたりいなかったりしますが、どちらの場合も一人きりという感じを強く受けます。忙中閑あり、時の流れも強く意識します。こういう空間は貴重です。
席に着いて決め台詞を言いたいところですが、慣れないことはなかなかできません。大抵は「アイリッシュを水割で」というところです。後は景色を眺めたり、バーテンさんと話しをしたり。
北九州では2箇所のシティホテルを利用することがあります。いずれも上層にバーがありますので、工業地帯から洞海湾への展望が広がります。夜目に鮮やかな数本の集合煙突、灯で浮かびあがる工場群。ふと「わが町」が思い出されます。
ソーントン・ワイルダーの戯曲「わが町」は、米・ニューハンプシャー州の架空の町・グローヴァーズ・コーナーズでおきる極めて普通の出来事がつづられています。
エミリーと隣町に住むジョージは幼馴染で、やがて恋仲になり結婚します。みんなに祝福された結婚式から9年が過ぎて、町を見下ろす丘の墓地に、出産で命を亡くしたエミリーの葬列がやってきます。死者となったエミリーは、一日だけ生前のある日に戻してもらいますが・・・。
私の観劇は1990年代前半、劇団Mode、演出坂出洋二(?)、「水島編」と「池袋編」だったと記憶します。黒木美奈子のエミリーが印象的でした。この戯曲に劇的なところは何もありません。しかし、しみじみとした味わいのある良い戯曲だと思います。
さて、横浜にすむ私にとって横浜は「わが町」ですが、そのような意識は希薄です。大きすぎるのかな。家があって、職場があって、知り合いがいて、程ほどの範囲内に生活圏が収まる。そのような町が「わが町」の私の印象です。的を射ているか否か定かでありませんが、私は、北九州の夜景の中に「わが町」を感じます。
次の機会には辛目のマティーニを作って貰いましょう。
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