随想:忘れないで「美しい国、日本」
「美しい国、日本」、既に過去の言葉かも知れません。
しかし、「美しい国、日本」を私は否定しません。おそらく誰も否定しないでしょう。可能であるか否かは脇において、「美しい国、日本」を概念規定する必要がありました。それをしないまま政治の世界に持ち込んだこと、それは大いなる誤謬であったと思います。誰かが否定するかも知れない政策を、誰も否定できない概念で括ってしまうところに大いなる矛盾があったと思います。
「美しい国、日本」、出自はともかく、過去の言葉にしないでいつまでも生き長らえさせる必要があります。小さなことから少しづつ積み上げていくのはどうでしょうか。
大上段に構えたわりに、これから先の話題はささやかなものです。できれば、そのギャップも楽しみながら(?)読んで頂きますように。
雪擁山堂樹影深
檐鈴不動夜沈沈
閑収亂帙思疑義
一穂青燈萬古心
雪は山堂を抱くようにして 樹影も際立たせ
軒の鈴は微動もせずに 夜は静かに更けていく
乱れた帙に書物を戻し 疑わしきことを思い返せば
一本の青い炎の中から 不滅の心が浮び上がってくる
菅茶山の漢詩「冬夜読書」です。
漢代の詩が漢詩、唐代の詩が唐詩ですから、漢詩と言うのも、さらに日本の漢詩というのも少し変です。しかし、漢詩は漢字で作られた詩の意味に転化しているようです。それは良いとして。
自分なりに訳してみました。この七言絶句からは深い静寂と思惟を感じます。華美なものは何も思い浮かびませんけど、美しい光景です。
ここに歌われるような世界は私の周囲にありません。憧れはありますけど実現したとしても心地良くは思えないでしょう。常に刺激を受けないと耐えられない生活にどっぷりと浸かっています。でも、「美しい国、日本」の一面として、私はこういう光景を思い浮かべます。戻ることはできないでしょうけど。
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