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2007年11月18日 (日)

演劇:カフカ・審判

 作     フランツ・カフカ
 構成・演出 松本修
 美術    伊藤雅子
 照明    大野道乃
 音楽    斉藤ネコ
 出演    笠置誠(ヨーゼフ・K)石母田史郎(頭取代理)、ほか
 劇場    シアタートラム
 時間    3時間15分(途中休憩15分を含む)
 観劇    2,007年11月17日 14:00~(たぶん満席)
 期間    ~12月8日、変則日程につき公演日注意

 ある朝、その日は30歳の誕生日であったが、借りている部屋でヨーゼフ・Kは逮捕された。悪事を働いた覚えがないのに。しかしKは拘留されることなく、今まで通りに銀行支配人として仕事を続ける。ある日電話で、日曜日に簡単な審理が始まり、同じような審理が頻繁に継続されることが告げられる。
 この物語は、 ヨーゼフ・Kの30歳の誕生日から31歳の誕生日までの1年間の出来事です。さて、31歳の誕生日に何が起きるか・・・・。

 物語は主に5つの場所で展開します。まずは自室と廊下を挟んでピュルストナー嬢の部屋、銀行、弁護士の部屋、迷宮のような裁判所、そして大聖堂。これらをどのように表現するかはとても興味ありました。

 舞台中央手前にベッド、その奥にドアー、その奥にもう一枚のドアー、ピュルストナー嬢の部屋。ドアーは照明によって奥が見えたり見えなかったりして奥行きと場面を制限をします。

 銀行の場面は、ベッドやドアーを片付けて、事務机を並べます。病気静養中の弁護士の部屋はベッドで。裁判所と大聖堂は、舞台奥に作られた数mから7・8mに至る階段状の台で。舞台左右、それから客席にかかるまでの壁と天井は、大聖堂を思わせるつくりになっています。

 他に面白く思ったのは、舞台前方を1/3ずつに分割したとして、左右の1/3づつが階段で客席下の地階に降りられる構造になっていることです。それも利用して、極めて立体的な空間が目の前に現れます。美術と照明は脇役ではありますが、この迷宮的な物語の場面場面を的確に切り分けていきます。美術と照明をこれほど意識したことはありませんでした。(拍手)

 ヨーゼフ・Kの笠置誠は、見えざる何かに対峙する焦燥感を良く感じさせます。休憩後の最初の場面、どうしてこのような演技を思いつくか感心しますが、それは観てのお楽しみ。

 全体に原作に忠実だと思います。松本修の構成・演出は奇を衒うことがありません。丹念に場面を構成していきます。3時間の上演時間は長いと感じる向きもあるように思います。しかし軽快に進行しては、カフカの迷宮的な物語の迷宮的な部分が薄れてしまうように思いました。観る方にも体力が要求されます。

 ある朝、目を覚ましたら逮捕された。当人にとって理不尽と思えることであっても、体制としては筋の通ったことかも知れません。そういえば、Kを逮捕しに来たのは軍服を思わせる制服の二人でした。

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コメント

私はstraussさんと、鈴木氏演出の「別冊・谷崎潤一郎」を観てきました。
初演から2年半を経ての再演、配役がかなり変わっていて新鮮でした。
特に、作家喬三=谷崎役を蔦森さんから竹森さんへ変更したことで、以前の重厚さに粘り気のような執拗さが加わって、より緻密な緊迫感が増したような気がします。
お国役の高野綾さんも、ぎりぎりのところで気品を失わず、華を感じました。
楕円堂という空間と作品がぴったりマッチした、とても濃密な世界でしたよ。


投稿: さらら | 2007年11月19日 (月) 20時24分

先ほどのコメント内容に誤りがありました。
「別冊・谷崎潤一郎」初演は、約3年半前です。訂正させてくださいね。

投稿: さらら | 2007年11月19日 (月) 20時33分

 さららさん、お疲れさまです。
 毎週のように静岡芸術劇場・グランシップを横目で睨みながら行来しています。跳び下りるわけにもいきませんし、静岡は遠い。「巨匠」は行きそびれてしまいましたが、国立三部作、カフカ二本立てと、珍しく動き回っています。
 「作家喬三=谷崎役を蔦森さんから竹森さんへ変更したことで、以前の重厚さに粘り気のような執拗さが加わって、より緻密な緊迫感が増したような気がします。」とのこと、なんとなく想像つきます。少しづつ世代交代が進むでしょうけど、さて来年はどうなるのでしょうか。
 また、明日からアウェイのお仕事お仕事。いずれどこかで。

投稿: F3 | 2007年11月19日 (月) 22時38分

今月末に行く予定です。
長いからちゃんと観られるかちょっと心配……。
F3さんのブログ、娘周辺でちょっと話題になってるみたいですよ~
チケットのことで話してて明らかになったのですが、この世界狭いですね。

投稿: strauss | 2007年11月21日 (水) 21時06分

 Strauss さん、こんばんわ。
 最近、アウェイでの仕事が多いので結構疲れています。という訳で、何か夢見ごこちで観ていたような気がします。最終日にもう一度予約を入れているので、今度こそしっかり観ようと思います。24日は「失踪者」。この年になって、カフカに入れ込むことになるとは思いませんでしたけど。文学青年になったような気がします。
 私のブログは素人演劇評です。自分の能力の範囲内で一生懸命に書いているつもりです。でも恥ずかしいから、業界関係者は立ち入り禁止にしたい、そんな気もします。ひょっとして娘さんにお目にかかることになるのですかね。

投稿: F3 | 2007年11月23日 (金) 01時49分

はい。
新国では御挨拶させますので、よろしくお願い致しますね。
この業界狭いですから、検索するとすぐヒットするんですよね。
深野さんのブログは胸を張って読んで頂けますよ。
私のブログは……。
相当広まってきていて、ジレンマです……。

投稿: strauss | 2007年11月23日 (金) 02時42分

 「文台引おろせば即反故也(芭蕉)」でしょうか。掲載してしまえば後は著者の手を離れます。仕事柄、一般の方より技術面には詳しいと思います。が、利用面は実践しないと判りませんね。それにしても情報技術の威力はすごい。掲載100回を超えてさらにその思いを強めています。通常ではありえないコミュニケーションも出来てきますから。逆に情報弱者のことも考えない訳にはいかないように思います。今後ともよろしく、新国立でもよろしく。

 昨日、シアタートラムでSさんとばったり。芝居が終わっても利賀のようにのんびり反省会(宴会?)は出来ませんけど。

投稿: F3 | 2007年11月25日 (日) 13時42分

情報弱者。
確かに。
F3さんはバランス感覚がいいですね。
だから安心して読めるのだと思います。

こちらこそよろしく。
新国でもSさんとばったりになりますよ、きっと。

投稿: strauss | 2007年11月26日 (月) 00時18分

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