路上観察:北九州小倉・文学散歩(1)
北九州と福岡に行く機会が時々あります。仕事なので必要最短の滞在ですが、たまに空白の時間が出来ます。先日の北九州行は、都合により夜中の仕事でした。昼間は特に予定もないので半分は寝ることにして、残る半分を小倉散策に費やしました。まずは北九州市立松本清張記念館へ。
西小倉駅下車、山側(南)に歩けばすぐに小倉城の堀端に出ます。そのまま少し歩くと小倉城南側の一角に記念館があります。松本清張は、1909年に今の北九州市小倉区で生まれ、44年間をこの地で過ごしたそうです。
松本清張を精力的に読んだ時期は随分前のことです。文藝春秋社・松本清張全集全38巻の発刊がきっかけです。その前後も多少は読んでいますが、全集刊行の辺りに集中しています。
第1巻は1971年4月発行、「点と線・時間の習俗・影の車」所収。定価は当時880円、現在は3262円(税込み)ですから35年で約4倍。比較すれば高くなっていますが、それでも他物価に比して本は安いと思います。
多作の松本清張ですから、全集を読んでも全著作の半分も読んだことにななりません。が、それでも若き日の読書暦として大きな位置を占めています。『鹿児島本線で門司方面から行くと、博多につく三つ手前に香椎という小さな駅がある。この駅をおりて山の方に行くと、もとの官幣大社香椎宮、海の方に行くと博多湾を見わたす海岸に出る。(点と線より)』。香椎駅を通過するたびに「点と線」が思い浮かびます。香椎海岸に情死体を発見するところから事件が展開します。
記念館を入ってまず圧倒されるのが、翻訳を含む全著作700冊の表紙のパネルです。これを見ると、多作などと簡単に言って良いかと思います。700冊を目の前にした重みです。
次に、かなり大きなパネル「清張とその時代」があります。松本清張の生涯と同時進行した時代の出来事の年表。ニュース映像を写すモニタが所々に埋め込まれています。反対側に「松本清張全仕事」のパネル、原稿などの展示。その膨大な仕事が一望できます。とても一度に全部を読みきる根気はありません。
次に、「推理劇場 日本の黒い霧」。松本清張の現代史への疑義を、資料フィルムなどを使用してまとめたドキュメンタリー映像。全てを見れば1時間20分、時間もないので「帝銀事件」「松川事件の一部」のみ鑑賞。真相解明されたとは言えない事件です。いつか自身に降りかからないとも言えない思いを改めて感じました。「松川事件」に広津和郎の映像が。全集、半分も読んでいないな。
残る大部分は、松本清張逝去(平成4年8月4日)時の自宅(東京・杉並)を、そのままの形で移築して展示。内部には入れませんが、要所要所の壁を透明なものに変えて中が見えるようになっています。膨大な蔵書に圧倒されます。書斎は簡素なものです。二階建ての住居がすっぽりと館内に収まっています。
後は、企画展示の小室があって、「新進作家 松本清張 取材に走る -信州上諏訪・富士見行-」が開催されていました。
月曜日の午前中という事もあって参観者は私と前後して数名、ゆったりとした雰囲気でしたが、時間に限りがあって残念でした。再訪の機会を持ちたいと思います。
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コメント
九州ですか~
ずいぶん遠くへいらっしゃったんですね。
松本清張は私もよく読みました。
それでもきっとF3さんよりも少ないでしょう。
映画やテレビドラマで観て、読んだ気になっているものも多いかも。
松本清張のお嬢様(といっても私より年上です)とご一緒する機会がありましたが、とても物静かな方でした。
ご自分のからはもちろん、周囲が水を向けてもお父様の話は決してされませんでした。
投稿: strauss | 2007年10月28日 (日) 23時29分
先週は二往復しました。一回はセントレア空港経由。来年まで通うことになりそうです。
プライベートではなかなか行くことができませんので、寸暇があれば何でも見ておきたい。また、松本清張記念館にも出かけたいと思っています。お嬢様、いろいろと気遣いもあるのでしょうね。大変だと思います。
投稿: F3 | 2007年10月29日 (月) 22時39分