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2007年9月 2日 (日)

演劇:利賀フェスティバル2007(3)

 三日目(25日)は二本の出し物を観ました。

(1) フリードリッヒ・デュレマット作、中島諒人演出、劇団島の劇場 「老貴婦人の訪問」

 あらすじ : 作者はスイス人、1956年作品。老婦人クレーレは、寂れた小都市ギュレンに、急行列車を非常停車させるという乱暴な手段で帰郷する。復讐のために。
 45年前、恋人レオに捨てられ、レオに買収された男たちの偽証で子供は認知されなかった。故郷を追われ、子供は死に、自分は娼婦に。その後、富豪に見初められて巨万の富を得る。
 クレーレは、イルを殺してくれたら市と市民に10億マルクの提供を提案。一部の良心的市民は提案を思い止まらせようと試みるが拒否、市の再生の道を塞ぐ。追い込まれた市民は、提案を全員一致で受け入れる。イルは闇に葬られ、死因は、市の再生を喜ぶあまりの心臓マヒと発表される。
 やがて、再生なったギュレンに急行列車が停車する。

 感想 : 私が観た今年の演目中で一番の出来栄え。いずれも高いレベルにあるが、さらに一歩抜き出ていました。中島諒人は2003年利賀演出家コンクールで優秀演出家賞受賞。劇団とともに鳥取で活躍しているようです。
 クレーレを演ずる中村きくえは若手には見えないけれど、その存在は大きい。彼女を中心に、他もしっかりした演技をしたと感じました。
 顔の中央部を丸く白塗りにしたメイクは、この芝居が架空の話ですと告げているようです。しかし、50年前に書かれた作品とは思えないほど現実味を帯びています。げに恐ろしきは女の執念か、金の力か。両方あれば一人の命を抹殺できるということか。いや一国さえ危うい現状、それを否定しきれないことが悲しい。
 耳が遠くなったせいか、声が小さくなくとも台詞の聞き取れないことが結構あります。この劇団は口跡が鮮やかで、言葉の美しさも堪能できました。今後ますますの活躍を祈念します。

(2) 鈴木忠志構成・演出 「世界の果てからこんにちは」

20070825_18  「昔、あるところにおじいさんとおばあさんがいました」という物語的な世界。あるところは養老院、おじいさんは日本を代表する老人(高橋等)、おばあさんは芸者春子(久保庭尚子)に。
 場面場面は、言葉の綾で笑いを誘い、音楽で手拍子を誘い、打上花火 で歓声を誘う構成。伝統芸能にご祝儀物があるけれど、これは利賀におけるご祝儀物。夏の夜の夢として大きな思い出になりそうです。そう言えば花嫁もでてきます。結婚行進曲は流れないけど。

20070825_21 僧侶(達)が大きな籠に入り、ピチカート・ポルカ(シュトラウス兄弟)に合わせて動き回る。車椅子の男(達)は「歴史にもおさらば、記憶にもおさらば」とコロスを演じる。紅白幕の女たち。鈴木忠志の演劇を観ていれば、どこかで見かけた筈。私は記憶が悪くて何が何と思い出さないですけど、そういう楽しみ方もあります。

 途中、「天皇陛下がお亡くなりになりました」と春子が告げ、「軍歌・海ゆかば」が流れます。池の向こうで花火が甲高い音をたて、林が真っ赤に燃える(火事ではありません)。戦後レジュームが崩れかけ、太平洋戦争の記憶も遠くなります。私は戦後世代ですけど、横浜の街中に進駐軍のキャンプがあったことは記憶に確かです。
 開演前に鈴木忠志が挨拶のなかで「これは私の終戦記念日だ」と言っていました。それぞれの受け止め方はあるでしょうけど、はなしの底流に反戦が横たわっています。世界の果てから、こんにちはと言って人びとが行き来できる世の中が切望されます。

20070825_27  かって、老人はSCOTの蔦森皓祐が演じていたけど今回から高橋に。経験の違いと言えばそれまでだけど、重厚さがややたりないために言葉の面白さがやや不足しました。台詞も聞きとりにくい感じです。
 春子は大分以前に久保庭に代わっているけど、今まではもっと小粋な感じがしました。演出構成が、従来に比べて華やかさが後退したように思います。今後も時折上演されるでしょうけど、利賀フェスティバルの締めとして華やかに終わることを期待しています。

20070825_28 出演者の最後に花火師9名がクレジットされています。「花火師にとどかぬ拍手送りけり 青柳時子」。

 この後、建築家・磯崎新と富山県知事・石井隆一の両氏が恒例の鏡割り。餅つきの杵で一気に割るので酒しぶきでびしょ濡れに。私は春子にお酌して貰ってよい気分に。

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