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2007年9月23日 (日)

演劇:アルゴス坂の白い家

 作  川村 毅
 演出 鵜山 仁
 出演 佐久間良子、小島 聖、ほか
 劇場 新国立劇場・中劇場
 時間 2時間50分(途中休憩20分)
 観劇 2,007年9月22日 14:00~

 

2007/2008シーズン「三つの悲劇―ギリシャから」三部作。各々、母・妻・娘の視点で見つめるシリーズの第一弾。作・演出とともに、佐久間良子のクリュタイメストラに興味惹かれます。佐久間良子は、私の観る演劇の範囲には入っていませんでしたから。

 エレクトラ(小島聖)とオレステス(山中崇)のデュエットによる歌劇風のオープニング。二人は黒色の衣装で終始してクリュタイメストラとの三角構造を暗示します。この出だしに「おや」と思うのですが、すぐに演出家(有園芳記)が出てきて「ギリシア悲劇にミュージカルは合わないよ」と、ダメを出します。

 劇作家(中村彰男)は「アトレウス家の悲劇」を底本にした物語を書こうとして、エウリピデス(小林勝也)に悲劇の書き方を教えて貰います。天井から系図がたれてきたりして物語が説明されます。

 ギリシャ悲劇を現代劇として演じようとする作者・演出家・俳優たち。これが物語の初層になります。この上に何層かの構造が構築されながら演劇は進行します。

 ここまでをかなり長く感じました。ギリシャ悲劇を理解していない人に対するサービスでしょう。古典を底本にした新作で、底本を理解しておく必要性の有無はどう考えたら良いでしょうか。私は最低限は理解していたと思いますけど、他人から見れば最低にもなっていないかも知れませんけど。

 劇作家が書こうとする物語は映画の撮影現場。
 クリュタイメストラという大女優そして妻(佐久間良子)、夫であり大映画監督のアガメムノン(磯部勉)、女優デビューするイピゲネイア(篠崎はるく)、新進作家のエレクトラ、娘のクリソテミス(山田里奈)、妻の愛人でシナリオライターのアイギストス(石田圭祐)、が白い家で生活しています。オレステスは家を出たままです。

 「戦争を知らなければ悲劇は書けない」と劇作家にエウリピデスが教えます。劇作家は、トロイの木馬すなわち新宿で発生するテロに出くわします。

 この物語では夫殺しも起こらなければ、母殺しも起きません。
 いまや大監督の座を滑り落ちそうな弱弱しい夫に妻は殺意を感じません。父が殺されなければ、エレクトラ・オレステスの母に対する復讐も成り立ちません。自分たちに運命付けられた悲劇を完成するためにクリュタイメストラが考えた方法は、みんなで殺人の真似事をすることでした。

 戦場になった新宿でオレステスの好きなシチューを作りながら独白するクリュタイメストラ。ここではクリュタイメストラでなく、大女優でもななく、一人の母かも知れません。
 母と娘、クリュタイメストラとエレクトラは最後に和解します。

 ストーリーは難しいです。なぜ、家族は新しい道を歩き始めるのか、母と娘は和解するのか。
 現代に置いて夫殺し、母殺しは悲劇と言うよりは現実です。現代における悲劇とは何でしょうか。「国と国との戦争とは何か。国の意思はいかに決定されるか」。悲劇の根源は戦争でしょうか。古代の戦争を核にした川村の問題提起は大きなものがあります。和解なくして未来は有り得ません。

 佐久間良子、華はありますけど求心力になっていたかな。全体的に演技がまだこなれていないように思えます。個々にはうまいと思いますが。もう一度観たい、後半に。

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コメント

観客のレベルというのを常に意識させられています。
商業演劇が紋切り型のエンターテイメントになるのは仕方ありませんよね。
何の予備知識もなくただ楽しみたいという人が大多数。ですからこの演出の試みは賛否のあるところではないのでしょうか。

お芝居は本来素の状態でも楽しめるべきではないのか、という思いもあります。
観客に知識を求めるのは傲慢ではないのか、と。
知識がなければ意味不明のお芝居を見るために勉強するのはしんどいことです。
ところが最低であれ知識を持って、そこから始める喜び(オーバーですね)を知ると、直球で入ってくるものでは物足りなくなるんですよね。
変なたとえですが、住み分けって必要ではないでしょうか。
選ぶのはあくまで観客です。

私、昔磯部勉のファンでした。彼はどうでしたか?

模索状態が続いているもので考えがまとまっておらず、的外れなことも含め、だらだらと失礼致しました。

投稿: strauss | 2007年9月24日 (月) 13時52分

Straussさん、コメントありがとうございます。
私の場合、全てのテキストを読んでから観劇するわけでありません。よって、判らないもの、多少は判ったと思えるもの、様々です。
私は判らないことに大きな抵抗はありません。よって、あまり親切なのもどうかと思います。判らないけど面白かった、ということはありませんか。次の機会に判るかも知れませんし、テキストがあれば後から読んでも良いと思います。読んでから観るか、観てから読むか。そのようなコピーが昔ありましたけど。
アルゴスに関して言えば、前半は親切すぎるし、真ん中あたりから後ろの方は不親切であったように思います。なぜ、母と娘は和解するのか、もう少しヒントがあっても良いように思いました。あくまでも私の中の尺度ですけど。
磯部勉、殺すに値しない父親を演じて存在感あり。他の新劇系の人もうまいですね。地味だけど舞台を支えています。

投稿: F3 | 2007年9月25日 (火) 01時59分

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