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2007年8月 4日 (土)

「横浜トリエンナーレ2008・タイムクレバスの概要について」

 主題講演会が「2008年7月28日14時~15時30分、横浜美術館レクチャールーム、水沢勉(総合ディレクター)」の要領で開催されました。主催は、横浜美術館協力会。 

 講演会は1時間半の予定でしたが、実際は2時間弱に延びました。初めの50分ほどを概要説明に、次の25分ほどをパウルツェランの詩に触れ、その次の40分ほどを海外美術展の報告・感想に費やしました。海外美術展の報告は省略して、以下に聴講の概要をまとめます。

 『2006年11月に総合ディレクターに就任した。キュレータに信頼をおいて、作家選択をまかせる。近々開催するチューリッヒの会議で30名ほどの作家を決定する。決定した作家にはできる限り横浜を見てもらう。最近の国際展では作家の選定が大きな要素になっている。ドキュメンタでは作家を公表しなかった。個人的には良いなと思った。序列をつけない作家選定は良いなと思った。キュレータの一部にも賛意を示す人もいる。第三回横浜トリエンナーレはそこまでいけるか判らないが。』

 『最近、人間が生きていくことに関する言葉がキーワードになる。何でも包み込むような「スーパー」のような言葉は主義主張を表明しないので、個人的には好まない。最近の美術展は経済効果を含めた商業主義に傾いた内容が多い。ドキュメンタには華がない、有名な作家はいない。よって、ジャーナリズムからは不評である。』

 『時間が無数の傷を負っている。しかし、それを誰も見ることはできない。感じることができるだけである。戦争とか暴力があるし、家族の諍いもある。相互にぶつかり合えば傷ができる。地球規模の暴力、それを温存させたまま、いつのまにか合理化している。図式化された価値感では説明できない。自他の状況そのものが捉えがたいという複雑で困難に陥った状況が、現状をさらに悪化させるという悪循環が生まれているのではないか。』

 『視覚を中心とした空間表象による世界観の把握、言い換えるなら視覚による世界の支配の論理ばかりがあまりにも優先されてきた。近代的世界システムの大きな矛盾である。たとえば、小さな石の視覚情報を簡単に共有できる。そこに秘められた時間の情報について、視覚情報はあまりにも不完全なものしか得られない。それを触った時の感触(触覚)、匂い、叩いた時に発する音、舐めてみた時の味、なども総動員して、初めて石の時間を豊かに感じとることができる。石の時間の傷を、大げさにいうならばそこに潜む時間のクレバスも、全感覚が励起されることで感じられる。』

 (投影資料)
   対話の彼方   Beyond Dialogue
   彼方の対話   Beyond-Dialogu

 『対話は目の前で起きる。それでは何かが足りないので彼方で起きる対話にも耳を傾ける。』

 『モネの睡蓮は、焦点がない奇妙な絵である。日本人には違和感がない。ヨーロッパ(文化圏)では、テーマがあり、中心となるモティーフが明確にある。芸術作品は万国共通ではないということ。モーツァルトのトルコ行進曲を宮廷で聴いている感覚が、(私たちには)なかなかわからない。(オーストリアは)オスマントルコにもっとも近い国であることが影響している。』

 『判りにくいことが私たちの感覚を呼び起こす。何かを考えるきっかけになる。日常的なことは芸である(職人芸)。アートとの一線が引かれている。彼方の対話が私たちの恵みである。そういうところにも光をあてたい。』

 井筒俊彦 意識を本質の中の「対話と非対話」に影響を受けていると話す。 

 『20世紀の大詩人、少なくともドイツ語圏で。』

 (投影資料、和独語で。訳は講演者によるものと思われる。遂次解説しながら) 

  パウルツェラン「息の折り返し」1967年

  腐食させ、剥ぎ取る
  汝が語る、光に射抜かれた言葉の疾風が
  浅はかな体験の色とりどりのおしゃべりを
     ---- 私の百枚舌の 
  詩、非-詩を

  旋風に吹きさらわれ
  視界の開けた
  道を ひとのすがたをした雪
  贖罪者の氷柱 なかを歩み
  もてなしの準備万端整った
  氷河の部屋へ入り、氷河のテーブルにつく

  深く
  時間のクレヴァスのなか  ( ZeitenSchrunde )
  気泡だらけの氷のそば
  息の結晶
  汝のゆるぎなき証人 
  それが私を待っている 

 『この詩に僕は勇気付けられる。人間が生まれて最初に吸った息は、死ぬと時に最後の息として吐き出す。息のクリスタルに最後に出逢う。』

 『これから、会場が作りこまれて作品が来る。用意が整ってないといけない。会場に入った瞬間に誰がやったかわかる。現代美術は、一番突き詰めたものを作れる。金額に振り回されたら良いものはできない。新港埠頭に作りたい。8月以降、企画は具体的に発表されていく。』

 地元で開催される横浜トリエンナーレが充実したものになることを期待しています。もう少し具体的な話が聞けるかと思いましたがまだまだのようです。話すにも限界があるでしょうけど。これから急速に展開するのでしょう、1年と少しの時間しか残されていませんが。

 うまくまとまっているとも思えないのですが、興味ある方に、多少でも参考になればと思います。

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