「森村泰昌―美の教室、静聴せよ展」のこと
セルフポートレートの森村泰昌が企画するユニークな美術展、次の要領で開催中です。
会場 :横浜美術館
会期 :2007年7月17日(火曜)から9月17日(月曜・祝日)
開館時間:午前1時から午後6時、金曜は午後8時まで開館(入館は閉館の30分前まで)
休館日 :木曜日
横浜美術館は二階が展示室。エスカレータで二階に昇ると、受付とホームルームの教室があります。ただし、壁は破壊され瓦礫が散らばっています。受付の反対側の壁に、アンリ・カルティエ・ブレッソンの写真が一枚。
外国の学校らしき建物、壁に大きな穴があいていて、通路には瓦礫が散らばっています。戦が終わったのでしょうか、嬉しげな顔で瓦礫を片付ける子供たち。脇に添え書きが。
『今回の教室作りのベースとなったイメージ。※爆撃や災害で/町や村が壊れても/黒板と机とイスがあれば/そこはもう「教室」』
この写真を見ていると、いろいろな思いが浮かびます。
美しい国とは、戦争や暴力のない時間の約束されていることが最低の条件。町や村が壊されたとしても、戦争や暴力が無くなるとすれば、子供たちに笑顔が戻ります。彼我のいずれの国にも笑顔が満ちていること。それが美しい国の最低の条件ではないでしょうか。
この写真に気づかない人が多いようです。森村泰昌のメッセージがこの一枚の写真に込められているのに、残念。
タイトルの「美の教室、清聴せよ」からも推測されるように、学校で授業を受ける形式で作品を巡っていきます。時間割は次のとおりです。
ホームルーム
1時間目:フェルメール・ルーム [絵画の国のアリス]
2時間目:ゴッホ・ルーム [釘つき帽子の意味]
3時間目:レンブラント・ルーム [負け犬の価値]
4時間目:モナリザ・ルーム[モナリザのモナリザの、そのまたモナリザ]
5時間目:フリーダ・ルーム [眉とひげ]
6時間目:ゴヤ・ルーム [「笑い」を搭載したミサイルの話]
放課後:ミシマ・ルーム
受付で無量の音声ガイドを貸してくれます。案内を聞きながら授業を進んでいきます。実は、二週間ほど前に、音声ガイドなしで授業参観しました。今回はガイド付きで、時間もたっぷりかけて授業を受けました。以前に森村泰昌の本を読んだことがあるので、大体はその範囲内で理解できました。しかし、セルフポートレートに取り組む意義は良く理解できます。是非、音声ガイドを借りてしっかり勉強してください。
さて、最後に気づきました。この企画展は「美の教室」と「静聴せよ」の二つに分かれるのではないかと。放課後のミシマ・ルームは、ビデオインスタレーション。三島の、防衛庁における割腹自殺の前の演説を模した森村泰昌の演説。「清聴せよ、清聴せよ」と叫び、最後に万歳三唱。最後に上げた手を下ろす仕草に脱力感、無力感がよく現れています。俳優・森村泰昌の誕生?
このビデオインスタレーションはとても面白く感じました。これからの作品が待たれます。しかし、夏休みで学生が多く入場しているので、授業と防課後の内容に違和感を覚えたのではないかと。まあ、他人のことは良いとして、私は違和感を覚えました。でも、現代美術を身近にする良い企画展だと思います。
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コメント
下駄箱のブレッソンの写真と放課後
部活のミシマルームが印象的でした。
そうか、「清聴せよ」は2部構成ですか。
妙な違和感が残りましたが、ゴヤルームの後、
笑いのあとにあの演説ですから…
そうですよね、わたしも愉しみです。
投稿: 女三宮 | 2007年10月29日 (月) 01時23分
いかがでしょう、2部構成説は。
本文は少し舌足らずでしたが、美術界の現状をアジッていたのですよね。美の教室とは、一線を画したい。
投稿: F3 | 2007年10月29日 (月) 22時50分