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2006年11月 3日 (金)

名古屋市美術館特別展「藤本由紀夫展」のこと

 会期は11月5日(日)まで。もし興味を持たれましたら急いでお出かけください。

 先週末、私は赴任先の知多武豊におりましたので、29日の日曜日、大いなる期待を抱いて名古屋市美術館に出かけました。11時過ぎに美術館到着、まずは館内のレストランでブランチ、お腹がすいていては心落ち着いて鑑賞もできませんので。

00721_11_  オルゴールの機構部が真っ白なお皿に載せてあります。ネジを巻いてお皿に戻すと、ネジの緩む回転で起き上がったり横倒しになったり思わぬ動きをします。発音部に加工がしてあるので、オルゴールの響きは断片的でもはや何の音楽であったかを確認することもできません。自らネジをまいて機構部を動かし、その様子を観察することで作品が完成します。かすかな音や機構部が倒れる意外なほどに大きな音で、非日常的な空間を感じます。私(達)は日常、鈍感に音に接しますが、葉摺れの音で季節の移ろいを感じるような繊細な感覚を持っている筈です。そういう感覚をよみがえらせてくれるのが、サウンド・アーティスト、藤本由紀夫の作品です。

 直径50mm、長さ2m弱の筒が2本、1mほどの高さに 支持されてL字型に置かれています。2本の筒が交わるところに椅子が置かれていて、そこに腰掛けると筒の両端が耳の位置になります。筒を耳に当てると意外な音が聞こえてきます。発音源が組み込まれているわけではありませんから、自分を取り巻く環境の音なのです。しかし、筒のおかげで通常では聞き取れない音が聞こえます。ホールのような場所に置かれているので、硬質でびんびん響く、例えれば、寺院などにある鳴き竜のような音が響きます。「音すれど聞こえず、物あれど見えず」などの先哲の言葉が思わず頭を駆け巡ります。

 通常なら絵画が展示されている筈のガラス張りのケース内に、色違いの目覚まし時計が20個ほど横一列に壁にかけられて展示されています。それを見るなら普通ですが、何とケース内に入り込んで時計の音を聴くのです。入った瞬間はほとんど音を聴き取れませんが、ある瞬間から目覚ましの時を刻む音が鮮明に聴こえるようになります。感覚が研ぎ澄まされるのでしょうか。夜中に響くちょっとしたもの音が、意外に気になるような状態かも知れません。

91212_23__1 美術館に音を聴きに行く、そういう面白さがあります。
 特別展の副題は、「ここ、そして、そこ」、そこ(THERE=見ること)には、ここ(HERE=聞くこと)が含まれるということ。非日常的な世界を知ることで日常的な感覚を磨きなおす、藤本の作品に難解なものはありませんが、その奥は深いと思います。

 でもね、もっともっと楽しいと思って出かけたのに、なぜ。
 展示の仕方が美術館然としているせいか。鑑賞者が少なく、他の行動に刺激されたり、私が刺激したりする関係性の稀薄なせいか。はたまた、西宮市大谷記念美術館で開催された「美術館の遠足」の印象が強く残るせいか。

 添付写真は大谷記念美術館「美術館の遠足(1999年、2000年)」より、名古屋市美術館は撮影禁止です。念のため。

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